町工場の生き残り方を考える。靴下工場「レッグニット中村」訪問レポート
こんにちは。
カールフォンリンネ(CVL) のデザイナーを務めさせていただいている  村松と申します。いつも応援くださってありがとうございます。
2024年  夏コレクションでは、CVL初の試みとして、靴下の販売をさせていただけるように準備しています。
今回、靴下製造のご協力をいただくのは、愛知県の靴下メーカー『レッグニット中村』さん。商品開発に向けて訪問し、担当の中村さんから、いろいろなお話を伺ってきました。
靴下ひとつ作るのにもさまざまなストーリーがあり、とても興味深かったので、こちらでご紹介したいと思います。

靴下を作るには多くの人の手が必要

私たちが普段何気なく履いている靴下。そもそも、靴下がどのように作られているのかご存じない方も多いのではないでしょうか。

靴下は、
編み立て
→つながった靴下を切り離し
→裏返し作業
→縫製
→表返し作業
→刺繍など加工
→セット(プレス)
→検品
→梱包

と、出来上がりまで多くの工程を踏む必要があります。また、その1つ1つの工程に手作業が必要で、それぞれ専門の会社があります。
1本の糸から、各工程をこなす工場や内職の方の手を転々とし、ようやく私たちの手元に届けられます。


創業50年の老舗メーカー「レッグニット中村」さん訪問

今回お伺いしたレッグニット中村さんは、昭和48年創業、50年以上の歴史を持つ老舗の靴下工場さんです。レッグニット中村さんでは、自社で靴下の編み立てや加工なども行いますが、靴下が出来上がるまで、たくさんの方の手にわたる全工程を管理するのが主なお仕事になります。

実際に、編み立て工場さんを見学させていただきましたが、そこでは、80代のベテラン職人さんと、20代の若手職人さんが、年季の入ったたくさんの種類の靴下用編み機を動かしいているのが印象的でした。近年では靴下用編み機は国内製造されていないため、編み機が故障した際は、部品を現場でイチから作ったり、古い編み機を解体して使えるパーツを集めたりしながら、なんとか動かして作っているのだそう。

創業時はカジュアル靴下製造をメインとした会社だったそうですが、時代の流れとともに賃金が安い海外製品に靴下製造が流れていってしまい、その後は、学校ごとに細かい別注対応が必要とされるスクールソックスがメインの製造品となっています。


また、少子化が続く社会背景を鑑み、製造だけではさらに厳しくなることを予想して、2006年からは自社ブランド『hacu』を作り、自社商品の販売にも取り組んでいらっしゃいます。

中村さんによると、靴下の企画・製造は属人性の高い仕事で、スタッフの育成や継承に課題を感じているとのことでした。また製造自体、完璧な教科書やマニュアルがあるわけではありません。古い機械は、職人さんの感覚や経験で使う部分があるので、経験が浅い人が簡単に動かせるわけではないので難しい。新しい機械は、さまざまなことができる一方、非常に複雑な作りで繊細な操作が求められるため、やはり上手に動かせるようになるまで月日とコストがかかり大変なのだそうです。

また、海外生産の増加と国内の人材不足によって、廃業される工場が多いことも大きな課題です、と中村さんは語ります。たくさんの工場によって1足の靴下ができるため、1つでも工場が減ってしまうと非常に困る。工場同士、横のつながりを大事にして、コミュニケーションを取り合い、教え合える体制が重要だと思っているとおっしゃっていました。

今後は、今まで築いてきたことを絶やさないように、スタッフの育成に注力し、協力工場とも家族のような付き合いをしながら、信頼関係を築いていきたいとのことです。

生き残りをかけてブランド作りに挑戦

自社ブランドを立ち上げたことは、レッグニット中村さんにとって大きな挑戦でした。
それ以前は、スクールソックスの製造に特化していたため、リブ靴下を作るノウハウしかなかったようですが、自社ブランドを作るうえで、糸の仕入れをイチから見なおしたり、編み方を勉強したり、新しい編み機を導入したりと試行錯誤されたとのこと。

さまざまな工夫を重ねることで、靴下のデザインのバリエーションを増やし、今では自社店舗を2店舗持ち、日本各地での販売やオンラインショップ展開など、たくさんのお客様に愛されるブランドに成長されています。
hacuが始まってからは、お客様から「もっとこういう靴下がほしい」という声が直接届くようになり、その声に応えることで、ルーズな靴下や子供用靴下、メンズ用靴下、冷え取り靴下などラインナップも増えていきました。協力工場も増えていき、自社の強みになったと言います。

レッグニット中村さんが今もメインで製造しているスクールソックスは、少子化や学校規定の靴下の撤廃などにより、注文は年々減っている状況でもあるそう。だからこそ、hacuに挑戦してよかった。hacuがなかったら、今頃もっともっと大変だったと思うとおっしゃっていました。

中村さんにこの仕事のやりがいを聞くと、買い足してくれるお客様やリピーターのお客様がいること、そしてお客様の喜びの声が聞けることが嬉しいとのこと。例えば、ベビーソックスを履いてくれていたお子様が、大きくなって、親子で会話しながらまた別の商品を購入して履いてくれている姿を見て、とても嬉しかったとおっしゃっていました。

CVLオリジナル靴下の特徴

そんなレッグニット中村さんにご協力いただき、CVLでは今回2種類の靴下 「リブ太靴下」と「和紙靴下」を販売します。

「リブ太靴下」は、レッグニット中村さんが最も得意としているリブ靴下で、見た目はシンプルで、履き心地が良くリピーターも多い靴下です。
「和紙靴下」は、夏でも蒸れずに心地よく履ける商品に仕上がっています。

こだわりの履き心地や素材をぜひ楽しんでいただければと思います。
販売をどうぞお楽しみにお待ちください。
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